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高齢者の生体リズム

生活習慣が不規則になりがちな現代社会において、『時間医学』が注目を集めています。時間医学とは、生物の生体リズムを研究する学問の考え方を医学分野に取り入れたもので、例えば高血圧症の治療に当たって、血圧の日内変動に合わせて降圧薬を服用する時間を決めるなど、特定の病気が発症しやすい時間帯を見つけて、それを病気予防や治療に生かす試みが行われています。この時間医学の観点から、健康的な生活を送るにはどうすれば良いか考えてみましょう。

目次

概日リズムと病気の関連性

動物・植物・微生物など、ほとんどの生物は体内時計を備えています。ヒトがある時間になると自然と眠くなったり、自然と目が覚めたり、あるいは一定の間隔で空腹感を感じたりするのは体内時計によるものです。その体内時計がつくり出す1日のリズムを『概日リズム(サーカディアンリズム)』と呼びます。この概日リズムは、24時間に1周する地球の自転活動によって生じる昼夜のサイクルにほぼ適応するような形で、外界の1日の環境変化に対して、ヒトが身体機能を最大限に発揮しながら生活するために不可欠なリズムです。

また、健康の維持には概日リズムをはじめとする生体リズムが重要であることが古くから指摘され、生体リズムと健康の関連性が重要視されています。下図のように、生体機能にも病気にも1日の間に変動が存在し(日内変動)、概日リズムがあることによって様々な病気にも発症しやすい、又は悪化しやすい時間帯があります。そのため、概日リズムが変化すると、その変化に伴う影響・障害が出やすくなり、場合によっては治療の効果に影響を及ぼすことも考えられます。

高齢における概日リズムの変化

元々の概日リズムの周期は、地球が自転で1周する24時間に近いほど健康的であるとされています。しかし、概日リズムは加齢によって大きく変化することが様々な研究により明らかになってきました。そして、環境の日内変動とのズレが生じることで睡眠不足や多大なストレスをもたらし、QOL(生活の質)や生産性の低下、さらに多くの疾患の発症や悪化に影響を及ぼします。加齢に伴って、概日リズムの変化による影響が顕著に見られるのが睡眠です。例えば、朝早くに目が覚めて夕方になると眠くなることが増えたり、眠りにつくまで時間がかかったり、夜中に突然目が覚めてしまうなどの現象が見られます。これらは「概日リズム睡眠障がい」と呼ばれ、概日リズムの乱れによって睡眠のリズムに障がいが出る状態を指しています。

生体リズムを整えて、健康的な生活を送る

概日リズム睡眠障がいなど生体リズムの変化によって生じる障害を改善するのに必要なことは、生体リズムをなるべく1日24時間に合わせてあげることです。実際、概日リズムの周期は約25時間と1日より少し長いため、ズレが生じます。ですが、太陽の光、時計など時間が分かるもの、食事や運動、あるいは通勤・通学といった毎日の習慣になっている行動などが体内時計をリセットすることによって24時間サイクルに合わせてくれます(これら体内時計をリセットする要素を「同調因子」と言います)。

起床・食事・運動・就寝など、毎日の行動時間を意識して整えることで、社会生活を調和させていく。こうした積み重ねが心地よい生体リズムを生み出し、健康的な生活へと導いてくれます。