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転倒のリスクを減らそう

転倒は高齢者に多く、転倒による骨折は要介護状態となる主な要因にもなっています。また、高齢であるほど転倒のリスクは高い傾向が見られます。今回は高齢者の転倒に潜むリスクとそのリスクを減らす方法について詳しく考察します。

目次

高齢者の転倒による2つのリスク

高齢者が転倒する時、大きく分けて2つのリスクが生じます。

 

❶外傷・骨折

転倒により生じる外傷、その中でも骨折は身体機能に大きな影響を及ぼします。 高齢者の転倒のうち約10%が骨折に至っており、特に転倒が原因になりやすい大腿骨頸部(脚の付け根・股関節部分)の骨折はADL(日常生活動作能力)とQOL(生活の質)を大きく低下させ、場合によっては要介護状態に陥る可能性もあります。

転倒の結果、骨折すると機能回復までには長期間の入院加療が必要になります。大腿骨頸部を骨折すると歩行困難になり、寝たきりの生活を余儀なくされます。すると、使われない筋肉はどんどん痩せていき、筋力低下につながります。

 

❷転倒後症候群

1度転倒すると歩くことに不安や恐怖を感じてしまい、歩く能力があるにもかかわらず、行動規制や歩行障がいを引き起こすことがあります。この歩行への自信喪失が転倒後症候群です。幸い、転倒して怪我をしなかった場合でも、歩行への自信を失い、転倒後症候群に陥ることで、うつ状態や寝たきり状態になってしまうこともあります。また、日常生活での活動量の減少はADLの低下をもたらし、さらに転倒リスクを高めることになる悪循環をもたらします。転倒後症候群が疑わしい場合には、定期的なリハビリや運動などのケアに加え、メンタル面のサポートも重要です。

安全な転び方をマスターしよう!

もし、バランスを崩して転びそうな時は、下記の“安全な転び方6ヶ条”を対処することを意識してください。転倒の際、特に気をつけたいのが頭部を打ちつけることです。脳の損傷、脳震盪、強烈な頭痛、めまい、失明、記憶喪失などの原因と成り得ますし、頭蓋内出血や硬膜下血腫による死亡例もあります。頭部を保護することが重要なポイントになりますが、万が一、転倒して頭を打ってしまった場合は、直ちに医療機関に診てもらいましょう。衝撃が弱くても、後で予期せぬ問題が起こる可能性があります。

 

●安全な転び方6ヶ条

 

①体の側面から転倒するようにする

 可能な限り、前後に直接転倒しないように体を回転させましょう。

 

②顎を引いて頭を守る

 

③転倒する時に手をつかない

 手首が折れたり、手をついても頭を打つ可能性もあります。

 

④腕は体の側面に置き、(転倒時の軌道によっては)上腕で頭を守るために両腕を上げる

 転倒した時のクッションにしたり、股関節を守る目的があります。

 

⑤膝を曲げ、体の力を少し抜いて転がる

 無理に転倒に抗おうとせず、衝撃を吸収するために体重を利用しましょう。

 

⑥太もも、お尻、肩が地面につくようにする

 膝頭は壊れやすいので、膝から転倒しないように心がけましょう。

 

“転ばない身体”をつくるトレーニングをしよう!

転倒予防のポイントは、“転ばない身体”をつくることです。そのためには、①身体のバランスを保つこと、②足の筋力を保つこと、③身体の柔軟性を保つことが重要です。

特に、下肢はたくさんの骨と関節で構成され、多くの筋肉が働いています。転倒予防に効果的な下肢の運動を継続的に行うことが大切です。今回は転倒予防に効果的に運動を2つご紹介します。

 

●ニーエクステンション

Point:大腿四頭筋を鍛える

太もも前面の筋肉を強化し、立ち上がりや歩行といった移動動作をスムーズにします。ひざ痛予防にもつながります。

 

椅子に浅めに座り、両手で座面を持って身体を安定させます。両足は軽く開きましょう。

 

息を吐きながら、ゆっくり片足のひざを伸ばします。伸ばしきったら太ももに力を入れて動きを止め、息を吸いながら元の位置に戻します。反対の足も同様に行います。

 

 

 

●カーフレイズ

Point:下腿三頭筋を鍛える

ふくらはぎの部分の筋力を強化し、足首の動きを良くします。転倒予防やバランス力の向上に加えて、全身の血流促進にもつながります。

 

椅子の背や壁などに手をついて身体を支え、両足を腰幅に開いて立ちます。背筋を伸ばし、姿勢を正しましょう。

 

息を吐きながら、背伸びをするようにかかとをゆっくり持ち上げます。ふくらはぎの筋肉に力が入るのを感じたら、息を吸いながらゆっくり元の位置に戻します。

サルコペニアについて

サルコペニアとは、ギリシャ語の『筋肉』を表す“サルコ”と、『喪失』を表す“ペニア”を組み合わせた言葉で、筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下している状態のことをいいます。サルコペニアは転倒をはじめ、骨折・寝たきりなどの原因にもなるため、十分な栄養の摂取や体力維持・筋力増加のための運動により、サルコペニアを予防することが重要です。